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忍者の心得を百つの歌にのせて 〜三重大・伊賀連携講座「義盛百首の世界」〜

この週末、2ヶ月ぶりに伊賀に行って参りました!

2ヶ月もの間、聖地伊賀の情報収集を怠るとは忍びとして未だ未熟なり。
もう一度忍びの心得を学び直さないと行けないでござるな。

忍びの心得は、忍術書を読めば書いてある。
ただこれを一から覚えるのは至難の技でござる。

手っ取り早く忍者の心得のポイントを知るにはどうしたらよいか!?


あるんです!
忍びの精神や忍び込むときのポイントをまとめた歌が!

それは「義盛百首」と呼ばれる伊勢三郎義盛が作ったとされる「忍者の心得や忍びの極意」が詰まった和歌である。
今回伊賀で行われた忍者講座のテーマは、この義盛百首でござった。

今回は到着早々、池田先生に連れられ、始めて一番前の席に座った拙者。
できれば後ろの方でこっそりと聞いておきたかったのだが、、

しかし講座が始まるや否や、今回ばかりは一番前でよかった!って思った回でござった。
なぜなら・・・

【講師の本廣先生が綺麗すぎる!】


まさかこんな若くて綺麗な先生が教壇に立つとは思っていなかったので、一番目の前で講義を聞けたのは本当にありがたかったでござるw
内容も話半分に、拙者はただ熱心に先生のお話する姿を見ておりましたw

内容を要約すると以下のような感じ。
忍者だけでなく、「和歌」という日本文化について教養が深められたことは本当に良かったでござる。



・義盛百首とは、伊勢三郎義盛が作った(正確には作者を義盛に仮託した歌)忍術の心得を百首の5・7・5・7・7の形式で表したもので、萬川集海にも引用されている。
・伊勢三郎義盛は源義経腹心の家来。平家物語では鈴鹿山脈の山賊、義経記には上野国板鼻の住人と描かれている。
・百首とは、百個の歌をまとめたもので基本的な定数歌。主に室町時代までは、平安貴族たちの恋や四季をテーマにした雅なモノを和歌といった。
・室町時代以降に出てきた、人生や仕事の教訓を読んだ和歌を「道歌」という。この流れの中で生まれたのが兵法道歌。
・義盛百種の研究書では、江戸時代に作られたのではないか、とするものが多い。言葉も現代に近く、非常に読みやすい。
・和歌と道歌はその目的から別のモノと観念されるが、和歌の一類型として道歌を位置付けられそうである。
・義盛百首は、忍びの心得だけでなく、盗みにはいる時のコツや、忍者を使う側の武将の心得までもが詠まれている。


ひとまずはその歌の具体例を見ないと面白さは伝わらないと思うので、いくつか紹介しようと思ふ。

窃盗(しのび)には 時をしるこそ 大事なれ 敵のつかれと ゆだんする時

「忍び込むときには、そのタイミングが大事だよね。敵が疲れているときと油断している時がチャンスやぞ!」という意味でござる。
なんとなく当たり前といえば当たり前でござる。

黒墨は 万事の用に 立つぞかし しのびゆかば やたてはなすな

「黒い墨っていろんな役に立つんだよね。忍び込むときは矢立は持っていくんだよ!」という意味。
矢立とは、昔の携帯用筆記用具のことでこんなのである。

情報収集という意味だと、その情報を忘れないように性格に伝えないといけないから、書き留める筆記用具は一番重要と言っても過言ではないのでござる。
鉄製の矢立だと、手元に隠していざというときに武器になる。
また、相手に目つぶしを喰らわせたいときは墨を相手の顔にぶっかけてしまえばよい。
忍び六具の一つにもなっているので、これだけは持っていった方がええですな。

軍には 窃盗物見を つかはして 敵の作法を しりてはからへ
「戦をするときにはまずは忍者を使って物見をし、敵の情報を知ることが肝要だよ!」という意味。

前々回の孫子の講座でも間者の重要性が説かれていたし、こちらは武将などの忍者を使う側の心得ですな。

門出(かどいで)に すわりし食に もみあらば 夜討しのびの 吉事なりけり 

「出立のときに食べたご飯に籾が入っていると運がいいよ!だからきっと夜討ちはうまくいくよ!」って意味。
昔の人は縁起を担ぐのが当たり前で、どの大名も専任の占い師兼気象予報士を雇っていたぐらい。
だから吉凶を占うのは当然のことなのでござる。
しかしなんで籾が入っていると運がいいのかなぁ。。

などなど、こんな忍びにとっては知っておくべき心得やスキルなどがてんこもりなのでござる。


この講座を通して感じたのは、もうとにかく先生が美しかったということなのだが、それは一旦置いておくとして・・・

いわゆる貴族達が読んでいた百人一首などでも有名な風流のある「和歌」は、その歌の芸術性に着目したもの。
一方「道歌」は、ある特定のテーマ(例えば「蹴鞠」とか「官僚」とか)に絞ったいわゆるハウツーを紹介する歌。
と拙者は解釈したのだが、この和歌と道歌の中間のような歌はないのかなぁ、と疑問が湧いた。
(質問したかったけど時間がなかった、、、)

例えば蹴鞠だったら、蹴鞠をやる中で感じる風流というか誰もが共感する「あるある」のようなものや、その遊びの素晴らしさというものがあるはずで、その蹴鞠をやったときの思いとか、感情とかを、季語なども駆使して上手く表し、芸術へと昇華させる歌があると、蹴鞠の面白さっていとをかしく伝わるのかなぁ、と思ふ。

世の中の人が感じるものって、四季や恋だけじゃなくて、ある仕事とかスポーツとかに熱中している中で感じるモノがいっぱいあるはずで、それを特定の分野ごとに集めたらすっごく面白いのにな、って思うのでござる。
要するにアメトーーークみたいな、その分野のマニアには共感させ、知らない分野のものだと「え、それってそんなに面白いの?」と思わせるような歌だ。

道歌は「こうしろ」とか「こうするといいよ」っていうものなので、そこに風流とか思いとかの観点は入っていないはず。
だとすると人の心を動かすことが到底難しい。

もしこういった和歌と道歌の中間みたいのが集まっていたら、そしてそれが忍者にまつわるものであったなら、昔の忍者がどんな風に感じながら生きていたのかがわかるだろう。


仮に、忍者に関してこういう歌があったとしよう。

①夜討ちより 満身創痍で 逃げ帰り 愚息の寝顔に 涙溢れん

今夜は夜討ち。
侵入するもバレてしまい、任務は失敗。撤退戦を余儀なくされる。
命からがら、傷だらけになりながらもなんとか家に着く。
まだ家族は寝ている。
こんなに拙者が頑張っているのに、この愚かな息子はすやすやと眠りおって。
寺の手習いでもいつも和尚に怒られてばかりのくせに。
でも・・・生きててよかった。。。
もう一度こいつの顔が見れてよかった・・・

(評者)
いつも死と隣合わせの忍者達。
厳しい修行の成果から、死んでも食いは残さないようにしているとは思われます。
ですが、忍者も人の親であり、人の子です。
完全に残忍になれる忍者などいなかったのかもしれませんね。

②忠よりも 正なる心に 仕えたし 我が手裏剣を 打たんとぞ思ふ
いつもいつも無理難題な任務を押し付けてくる我が殿。
忠義が大事なのはわかっているが、この殿はダメだ。
私利私欲のために政治や戦を行っている。
明日の夜、手裏剣を殿のこめかみに向けて打ってしまおう。
忠誠を捨てるのは忍びとしてあるまじき行為だが、拙者は拙者の正心に正直に生きたい。

(評者)
忍びが忠を捨て、正心に目覚めた瞬間を詠んだ歌です。
忍者だって1人の人間。正しいことをしたいと思う気持ちが表れていますね。
当時の忍び達は「自分たちのしていることがいいことなのかどうなのか」と葛藤していたのでしょうね。

③あの人の 秘めたる錠を 打ち壊す 逆手苦無を 知る者はなし
前の亭主が亡くなってから一切笑顔を見せなくなった若奥方。
拙者は下人としてなんとか笑わせようと明るく接するも、心を固く閉ざす若奥方。
侵入時に使うクナイで鍵を開けようとするもできないとき、順手ではなく逆手でやってみたりするように、いろんな手を尽くしてみてもまだ笑ってくれない。
この拙者の若奥方への想いは、誰にもわからない。。

(評者)
これはある忍びの未亡人を恋する思いを深く詠み込んだ詩ですね。
この詩のポイントは逆手苦無です。
苦無は「苦しみが無い」と書きますね。
これを逆さに持っているということは「とても苦しい」ということなのでしょう。
こんな深い意味合いを持っているのです。
この詩を詠んだ忍者の心の叫びが聞こえてくるようです。
私は小倉百人一首に入れてもおかしくない出来映えだと思います!


な、、なんと・・・
評者の方から、とても光栄なお言葉をいただいてしまったでござる!
きっと次から生産される小倉百人一首は、「小倉百壱人一首」となることであろう。
次回の生産が楽しみでござるw

ってな感じでそういったのもあったらいいなぁ、と風流を愉しんだところでお開きでござるが、もし忍者に限らずともこういうのがあるようだったら、三重大学まで参上するので本廣先生に個別授業をしていただきたいでござるな!w

それにしても講義で山田先生がおっしゃっていた義盛百首のかるた、ぜひ欲しい・・・
本当に製造してくれないかな!

あとは↑で拙者がサンプルで作ったような詩で、「百『忍』一首」もぜひ作ってみたいでござるな。
「た」の文字はぜひ「嵩丸」を登場させて欲しいところでござるが、きっと多羅尾光俊とかに持ってかれるんだろうけどね!

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2 comments

Comment

しころ

2013.07.22 at 00:05   | Edit

私が新幹線で寝てる時にせっせと更新していたとは。さすが嵩丸さん

なんて、すばらしい忍歌だ!!!
特に3首目、下人のストーリーにグッときただけでなく逆手苦無によるまさかの心情表現に驚かされたよ!才能あるよ!!
来月の講座も楽しみだねー♪

嵩丸

2013.07.22 at 09:24   | Edit

>しころちゃん
何度か席立ったとき通りかかったけどずっと爆睡だったもんねw お疲れ様!
意外と考えてみると忍者の句は結構深いのが詠めそうだよ!ってか百忍一首しころちゃんに作って欲しいわ〜