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天正伊賀の乱の真実に迫った小説 〜山河果てるとも〜

今年の「第34回吉川英治文学新人賞受賞」に見事輝いた伊東潤氏。
緻密な調査とリアリティ溢れる展開が魅力の、いまノリに乗っている歴史小説家でござる。

受賞した「国を蹴った男」は読んでおこう!と思って検索してみたら・・・・

この方、メジャーデビュー2作目で「天正伊賀の乱」を題材にした小説を書いていることが発覚!!

ー 忍者としてはまずこっち読まんとあかんやろ

と思ってKindleで落として早速読んでみたでござる!

【伊東潤「山河果てるとも〜天正伊賀悲雲録〜」角川書店】



多分忍者ファンにとっては驚愕な事実だが、、、なんと、、、

この小説、忍者はいっさい出てきません。

いつ頃出るんだろうなぁ、とちょっと期待しながら読み進めていたが、本当に一人も出てこなかったのでござる。
強いて言えば、伊勢勢が攻めたときに頭上から手裏剣らしきものが飛んできた、のと、焙烙玉が使われた、くらいの記述はあったがホントそれくらいであった。
登場する伊賀の評定衆も、メイン人物である青年たちも、みんな武士でござった!

でも、拙者はこの小説すごく好きであり、かなり的を得ていると思ふ。
逆に忍者を出して、忍術とか出したりして、作品として軽い仕上がりにならなくて良かった。

史実として、天正伊賀の乱は第1次の際は伊賀軍の圧勝だったものの、第2次の際は伊賀の者たちは全滅している。
「忍びの国」の和田先生も、先日のトークショーにて忍者小説として書くなら1次の方しかなくて、第2次の伊賀の乱は悲しすぎて書けない、とおっしゃっていた。

その通り。
めっちゃ悲しいし、重い。
その事実を伊東先生は余すことなく書いてくれた。

「山河果てるとも」の焦点は伊賀の地侍達に当たっている。

小さい頃から兄弟のように遊んでいた仲良し4人組の男達。
ずっとこの伊賀の地でこのまま大きくなっていくのだと思っていた。
だが、あるとき織田信雄が伊賀に進行してくる。
悩みながらも、織田方に降るのか、伊賀を守っていくのか立場を決断してゆく青年達。
そして様々な因果から立場を分つことに。
凄惨な戦の現場を体験した彼らは、どんどんと時代の渦へ飲み込まれていく。。。

最後には「国破れて山河すらない」状態になってしまったのでござる。。

進んでも退いても逃げ場のない状況に陥る人々ばかりで、いたたまれなかった。
悲劇以外の何ものでもない。
そして敵も味方も悪い奴が多すぎるw
本当に絶望的な状況の連続だった。

しかし、その中に見える男達の武士としての誇りや生き方、死に方が格好良すぎた!
死ぬとわかっていながら女子供は逃がしつつ、立ち向かっていく男達。
圧倒的な人数差にもかかわらず、知略を駆使して、奮戦して織田方を苦しめる武士達。
神出鬼没的な戦いが多かったので、その辺りが忍術として後世に描かれていたのかもしれないな。

名もなき人達の感情を、つぶさに描写した名作にござった!!


ってかやっぱり当時は、このような武士達の戦いというのが事実に近いんだろう。
それは多分薄々わかっていてもどうしても「伊賀=忍者」に結びつけたくなるのだが、これに飛びつかなかった作者には本当に天晴でござった。
フィクションのイメージが強い忍術などを入れていたら、その悲しさとか本当の事実とかは、どうしても霞んでしまっただろうから。

この作品はとにかく「事実」と「人」に意図的にフォーカスした作品であり、意図的に忍者は排除したはずでござる。
それが小説の重みを増したわけだが、真実として「忍者が忍者として、その歴史の中で動いていなかったのか?」という点が否定されたものではない。
忍者の活躍はあったんだ、というロマンは抱き続けていきたいでござるな。

果たして実際にはどうだったのでござろうか。
どっかのよくあるドラマ見たいに戦国時代にタイムスリップしてみたいぜw

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2 comments

Comment

伊賀之如狐

2013.03.20 at 02:45   | Edit

あの時代の伊賀衆を、忍者と解釈するか、伊賀の地侍と呼ぶか・・・それこそ解釈の違い、表現の違いに過ぎぬ面もあるかも知れぬがこの禁欲的な(というのか?)リアルなアプローチで描かれた天正伊賀の乱、興味深いでござる。
ロープライスで注文するべきか・・・Kindleにするべきか・・・・

嵩丸

2013.03.20 at 18:34   | Edit

如狐さんコメントありがとうございます!
一旦忍者という視点を離れて地侍視点で伊賀の乱を見るのも新鮮ですので、とても有用だと思いますよ!
僕はどうしても早く読みたかったのでkindleで注文しちゃいましたが、やっぱ紙の本の方がしっくりしますね〜。。